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バッハの曲から 主よ、人の望みの喜びよ
Dona Nobis Pacem (Bach)

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  Erbarme dich, Mein Gott
"The Passion According to St. Matthew"

「憐れみ給え、わが主よ」 (オラトリオ「マタイ受難曲」より)



Erbarme dich, mein Gott,
Um meiner Zahren willen ;
Schaue hier, Herz und Auge
Weint vor dir bitterlich
Erbarme dich, ernarme dich.


我が主よ、我を憐れみ給え
涙とめどなくあふるるを
魂(たま)も、眼(まなこ)も
御前(みまえ)に噎(むせ)び果てぬ
主よ、我を憐れみ給え、憐れみ給え

<訳:絢>


memo

Erbarme dich, Mein Gott


作曲:ヨハン・セバスチアン・バッハ、1727
    Johann Sebastian Bach (1685-1750)
    オラトリオ「マタイ受難曲(BWV.244)」第39曲
    (初演1727年4月17日)

この「憐れみ給え、我が主よ」は、バッハのオラトリオ「マタイ受難曲」の中でもっとも有名なアリアの一つです。この曲は、「ペテロの否認」を描く第38曲「レチタティーヴォ:ペテロは外で中庭にすわっていた」の直後に演奏されます。

ペテロは、捕らえられた主イエスと一緒にいたことを否認し、自らの保身を図ろうとします。「あなたはナザレのイエスと共にいたはずだ」と二人の下女から指摘されても、その都度それを否定し、神に誓いを立ててみせます。そして、ペテロが三度目に「私はイエスという人を知らない」と誓ったとき、傍らで鶏が鳴きます。その途端ペテロは、捕らえられる前にイエスが言った「あなたは鶏が鳴く前に三度私を知らないと言うだろう」という言葉を思い出し、外へ飛び出して激しく泣き出します。(「マタイによる福音書(26:69-75)」)
この曲はその場面を踏まえた内容になっていて、アルトによって歌われます。

「受難曲(Passion)」はこの世におけるイエス・キリストの受難を曲にしたもので、おおむね新約聖書のマタイ、マルコ、ルカ、ヨハネの四福音書の記事をその典拠としています。
キリスト教では典礼に聖書からの朗唱を行う伝統があり、中世以降、特に北イタリアで幾人かに分担されて歌われるようになり、それが混声による受難曲へと発展したと言われています。地方によっては復活祭に先立つ聖金曜日(イエスがゴルゴダの丘で処刑された記念日)に演奏されることもあります。

「オラトリオ」はオーケストラに合唱・独唱が入った大規模な楽曲で、通常筋があり、いわば演奏会形式で物語を上演するものです。ただし、衣装をつけたお芝居などはありません。瞑想的性格をもつ劇が多く、一般的に宗教的な内容です。有名なオラトリオには、このバッハの「マタイ」の他、シュッツの「クリスマス・オラトリオ」、ヘンデルの「メサイア」などがあります。

「マタイ受難曲」は、オーケストラと混声合唱がおのおの二つ、それに児童合唱が入り、全曲の上演は3時間を越えるという大作です。バッハには四福音書すべての受難曲がありますが、偽作だとされる「ルカ」をのぞき、現存するものは「マタイ」と「ヨハネ」の2曲です。

内容は新約聖書「マタイによる福音書」(第26節第1節−第27章第66節)を土台とし、それにバッハの朋友であるピカンダー(Picander)の詩集「真面目で諧謔的な詩と風刺的な詩」(1729)第2部などを組み合わせて使われました。典礼用でありながら、世俗音楽やコラールを巧みに折り合わせた点も、この「マタイ」が万人に愛される理由のひとつでしょう。

後、啓蒙思想の訪れと共に、様式の柔軟性を求める風潮に押され、形式にのっとって作曲されていたバッハの曲は次第に敬遠されるようになりました。「マタイ」も長く忘れ去られていたのですが、1829年3月11日、メンデルスゾーンによりジングアカデミーで再演され、それをきっかけとしてJ.S.バッハの業績が再発見されたという経緯があります。

曲はイエスの苦難を描いていますが、例えばこの曲に見られるように人間的要素に満ち、宗教的枠組みを超えて人々に感動を与えるものになっています。穏やかで、心休まる旋律は西洋キリスト教文化圏を越えて広く愛され、今日も各国で演奏されています。




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